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エンゲル係数で見る物価高――食費の比率が映す家計の「逃げ道」

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食料品の値上がりを、家計の比率で読む

物価高を考えるとき、食品が何%値上がりしたかだけでは、暮らしへの影響を十分に捉えられない。同じ値上がりでも、食費が家計の大きな部分を占める世帯ほど、負担感は強くなりやすいからだ。

そこで手がかりになるのが、エンゲル係数である。これは、消費支出のうち食料への支出がどれほどの割合を占めるかを示す指標だ。計算は「食料支出÷消費支出」。食費の金額そのものだけでなく、家計全体の中で食費がどの位置にあるのかを見る。

ただし、エンゲル係数は物価上昇率そのものではない。食品価格の変化に加え、住居費、光熱費、交通費、通信費など、他の支出がどう動いたかにも左右される。そのため、係数が上がったときは、食料品が高くなった可能性だけでなく、他の支出を削りにくい、あるいは食費以外を抑えている可能性も考える必要がある。

高齢単身世帯と男性単身世帯を比べる

資料にある一か月の支出から、エンゲル係数を計算すると、次のようになる。

世帯の区分調査時期食料支出消費支出食費の割合
高齢単身世帯201401-20141236067円156894円約23.0%
単身世帯の男性201401-20141241772円186260円約22.4%

いずれも、食料支出は消費支出の約五分の一強に当たる。高齢単身世帯では、食料支出の金額は男性の単身世帯より小さい一方、消費支出全体も小さい。その結果、食費の比率は高齢単身世帯のほうがやや大きくなっている。

ここから読み取れるのは、「食費がいくらか」だけでは家計の重さを判断できないということだ。食料支出が少なく見えても、家計全体が小さければ、その支出は相対的に大きな存在になる。逆に、食費の金額が大きくても、消費支出全体がより大きければ、比率は低くなることがある。

係数が示すのは、家計の選択肢

エンゲル係数を物価高の指標として読むとき、重要なのは数字の大小を単純に順位づけすることではない。食費は、完全になくすことが難しい支出である。値上がりしたからといって、食事そのものを大きく減らすことは容易ではない。

一方、衣服、娯楽、外食、耐久財などには、購入時期をずらしたり、数量を減らしたりする余地がある場合がある。食料品の値上がりが続くと、家計はまずこうした支出を抑え、食費を優先することになる。その結果、食費の割合が高まることがある。

つまり、エンゲル係数の上昇は、食卓の問題だけでなく、食費以外に回せるお金が狭くなっている状態を示す場合がある。家計にとっては、単に「食品が高い」という話ではなく、他の消費を選ぶ余地が小さくなるという問題でもある。

国をまたいで使える見方

エンゲル係数は、国ごとの制度や通貨が違っていても、考え方をそろえやすい。食料支出と消費支出の関係を見るため、家計の規模が異なる場合でも、比率として比較できるからだ。

もっとも、世帯人数、年齢、住居費の扱い、外食を食料に含めるかどうかなど、統計の定義が違えば単純比較はできない。また、係数が低いことが直ちに暮らしやすさを意味するわけでもない。食費が抑えられている理由が、価格の安さなのか、食生活の違いなのか、他の支出が大きいからなのかを確かめる必要がある。

日本の読者にとっても、見るべきなのは係数の数字だけではない。食費の金額、消費支出全体、世帯の人数や年齢を合わせて見ることで、物価高がどの支出を圧迫し、家計の選択肢をどれだけ狭めているのかが見えやすくなる。

エンゲル係数は、物価高を「値段の変化」から「家計の余地」へと視点を移すための指標である。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003109544

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003207460