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貯蓄は「国民の余力」か「国内に残る資源」か――Gross savingsを読み分ける

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貯蓄率は、家計の預金残高ではない

「Gross savings of GDP」は、国全体の所得のうち、すぐには消費されず、投資や将来の支出に回り得る部分を経済規模との比率で捉える指標です。ここでいう貯蓄は、個人が銀行口座に持つ残高だけを意味しません。家計、企業、政府など、経済全体の部門を合算した概念です。

そのため、貯蓄率が高い国だからといって、すべての住民が豊かで、自由に使えるお金を多く持っているとは限りません。企業が利益を社内に残している場合や、政府部門の収支が影響している場合もあります。反対に、貯蓄率が低くても、家計が一斉に困窮していると直ちに判断することはできません。

この指標を読むときに重要なのは、「誰の貯蓄か」だけでなく、「どこで生み出された所得が残っているのか」です。

国内貯蓄と国民貯蓄は、似ていても視点が違う

World Bankには、国内総生産に対する「Gross domestic savings」と「Gross savings」の指標があります。前者は、国内で生み出された生産と所得のうち、消費されずに国内に残る部分を考える指標です。国内経済の中で、消費以外にどの程度の資源が残っているかを見るのに向いています。

一方、「Gross savings」は、国外との所得の受け取りや支払いも考慮した国民所得を基準にした貯蓄です。海外で得た所得や、国外への所得移転が大きい経済では、国内で生み出された価値を基準にする場合と、国民が受け取った所得を基準にする場合で、見える姿が変わります。

指標主に見ているもの読み取る視点
Gross domestic savings国内で生み出された経済資源のうち消費されなかった部分国内の投資余力や資源の残り方
Gross savings国外との所得の流れを含む国民全体の貯蓄国民所得に対する貯蓄の厚み
Current LCU各国の通貨で表した貯蓄額同じ国の中での推移
Current US$米ドル換算した貯蓄額通貨をそろえた規模の比較
Domestic credit金融部門が国内に供給する信用貯蓄が金融を通じて活動に結び付く環境

ドイツ語圏の国々を比べる場合も、国内での生産力を見たいのか、国境を越えた所得を含む国民の所得形成を見たいのかで、選ぶ指標は変わります。単に「貯蓄率が高い国」と順位を付けるだけでは、経済の仕組みを十分に説明できません。

金額と比率は、別の問いに答える

貯蓄をGDP比で見る方法には、経済規模に対して貯蓄がどれほど大きいかを比較しやすい利点があります。国の大きさが異なっていても、経済に占める貯蓄の存在感を同じ物差しで考えられます。

ただし、GDP比は「実際にいくらあるか」を示すものではありません。World Bankは、国内総貯蓄を各国通貨による現在価格の金額でも、米ドル換算の金額でも提供しています。国内通貨の系列は、同じ国の中で金額の変化を追うのに適しています。米ドル換算は国をまたぐ規模の比較に使いやすい一方、為替変動の影響を受けます。

したがって、比率が上昇した理由が、貯蓄額の増加なのか、GDPの変化なのか、あるいは両方なのかを確認する必要があります。金額とGDP比を組み合わせて読むことで、経済規模に対する貯蓄の重みと、実際の資金量を切り分けられます。

貯蓄があっても、投資に結び付くとは限らない

貯蓄は、投資のための資源になり得ます。しかし、貯蓄率だけでは、その資金がどのように使われたかまでは分かりません。国内で設備投資や住宅投資に向かった可能性もあれば、国外の資産取得や金融資産の保有に向かった可能性もあります。

そこで補助線になるのが、金融部門による国内信用の指標です。金融部門が国内経済にどの程度信用を供給しているか、また民間部門への信用がどの程度かを見ることで、貯蓄が金融仲介を通じて企業や家計に届く環境を考えられます。

ただし、信用の規模が大きいことは、必ずしも健全な投資や豊かな生活を意味しません。借り入れの増加、資産価格、返済能力など別の要素も関係します。貯蓄率と信用指標は、原因と結果を直接示す組み合わせではなく、資金が経済の中をどう動き得るかを考えるための材料です。

比較では「定義・通貨・所得の範囲」をそろえる

Gross savingsを読む際は、指標名が似ている統計を混同しないことが第一歩です。国内貯蓄なのか、国民貯蓄なのか。GDP比なのか、現地通貨の金額なのか、米ドル換算なのか。さらに、同じ期間を比較しているのかも確認が必要です。

World Bankの系列は、各国の公的統計や国民経済計算などを基礎に整理されています。IMFにも国民総貯蓄をGDP比で示すデータがあります。機関やデータベースによって定義、推計方法、更新時点が異なる場合があるため、比較の前に metadata や系列名を確認するのが安全です。

貯蓄は、節約の美徳を採点する数字ではありません。それは、消費されなかった所得が国内外の資産や投資へ向かう可能性を示す、経済全体の流れの指標です。国内に残る資源と、国民が得た所得の違いを意識することが、国境を越えた比較を読み解く出発点になります。

出典

https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDS.TOTL.ZS

https://data.worldbank.org/indicator/NY.GNS.ICTR.ZS

https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDS.TOTL.CN

https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDS.TOTL.CD

https://data.worldbank.org/indicator/FS.AST.DOMS.GD.ZS

https://www.imf.org/external/datamapper/NGS_GDP

https://data.worldbank.org/indicator/FS.AST.PRVT.GD.ZS